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フィールドサーバの要素技術 |
フィールドサーバは,耐候性筐体,計測用Webサーバ,複数のセンサ,無線LAN,ネットワークカメラ,超高輝度LED照明などを内蔵し,パワーPhoto-MOSリレーによって外部機器の電源のON/OFF制御などを行います。
また,フィールドサーバをインターネットに接続するためのフィールド・サーバゲートウェイ,インターネット経由で世界各地のフィールドサーバのデータを収集及びネットワークカメラや外部機器の遠隔制御を行うフィールドサーバエージェント,収集したデータをデータグリッド化するMetBroker等のソフトウェア技術から構成されています。
耐候性筐体
台風時の強風や豪雨に耐える防水性,沙漠の砂塵や猛暑・厳寒に耐える防塵性・耐暑性・耐寒性を有する必要があります。
従来は,観測機器を風雨から守るプレハブの観測小屋をフィールドに建てるのが普通であり,防暑・防寒のためのエアコン,商用電源,データ通信のための公衆電話回線が必須でした。
フィールドサーバでは,それと同等の機能を直径200mmの小型アクリル筐体で実現するため,以下のような方法を用いています。
・ファンによる強制通風
PC用小型ファンで外気を取り込み,真夏の日射下でも正しく気温・湿度を計測(アスマン式温湿度計測)。さらにこの通風を内部の基板の冷却にも利用しているため,消費電力が大きい電子機器でも搭載可能。
・フィルタ
内部に埃や微小生物が侵入しないようフィルタを通して吸気。フィルタは空気中の花粉や胞子のサンプラーとしても利用可能。
・カスタマイズ性
フィールドサーバの筐体は屋外設置可能なPCプラットフォームとして,機器の追加,サイズの変更等に柔軟に対応可能。

左目用画像 |

右目用画像 |
ステレオカメラで撮影した立体画像。右目で右画像,左目で左画像を見ると立体的に見えます。3D液晶ディスプレーを用いると簡単に立体画像を見ることができます。
計測用Webサーバ
フィールドサーバ・エンジンは,フィールドサーバのコア・パーツです。DDS(Direct Digital Synthesizer)やFPAA(Field Programmable Analog Array:再定義可能な20個の汎用機能モジュールからなり,その間の配線を変更可能),アナログ乗算器(周波数変換や乗算演算を行う),24bit精度8chのΔΣ型ADコンバータを搭載しています。フィールドサーバ・エンジンを使うと,フィルタ回路,スーパへテロダイン受信機,送信機など種々の電子回路を基板上にリアルタイムに生成することができます。DDSで生成された信号は,土壌や植物体などの水分計測,NMRなどに利用できます。
フィールドサーバ・エンジン
DDS版 |

フィールドサーバ・エンジン FPAA版 |
フィールドサーバ・エンジンの最新バージョンは,これら全てを1枚の基板に搭載しました。なお,現在,市販されているフィールドサーバにPICNICが使用されていますが,フィールドサーバ・エンジンDDS版は近日,搭載予定です。
フィールドサーバ・エンジンはOSなしで稼働するWebサーバ基板であり,操作及びデータの表示はブラウザのみで行うことができます。
画面の表示例
センサ
気温,湿度,日射量のセンサを標準搭載し,オプションとして,現在,以下のセンサを搭載可能です。 ・土壌水分 ・葉の濡れ ・CO2濃度 ・UV(紫外線)
・害虫カウンタ
フィールドサーバエンジンを使うと,振動,気圧,GPS,放射線,NMR,分光等のセンサも比較的簡単に搭載できます。
無線LAN
無線は電波法の規制を受けるため,海外での展開を考慮すると現状ではWi-Fiが最適です。また,通信の高速性を活かして短時間で大量のデータを伝送できるため,省電力制御と組み合わせると,従来のセンサネットワークで使用される特定小電力無線なみの消費電力で運用可能です。
パソコンやハンディゲームマシン用に安価で高性能な市販の無線LANモジュールを適宜選択して利用するようにしています。
無線LANの伝達距離は,見通しで数100m〜1km,ビームアンテナを対向させると数km〜10kmまで届きます。最近は22km届く無線LAN機器もあり,距離や用途などに応じて最適な組み合わせを選ぶことができます。
フィールドサーバを数10m〜10kmで面的に配置すると,どこでもインターネットが利用できる無線LAN環境になります。今後,WiMAX
(IEEE802.16)やAdaptive Radio
(IEEE802.22)によって60km程度まで接続できるようになると,更に広域でユビキタスな無線ネットワーク環境を作ることができます。
フィールドサーバは農村や山間地におけるユビキタス通信環境とセンサネットワーク環境を同時に作り出しますので,環境のリアルタイムモニタリングを行うと同時に,渓流釣りをしながらインターネットを楽しんだり,快適な環境状態にあるエリアを検索してキャンピングを楽しむことができます。
「ハワイと同じ快適な場所はどこ?」,「ここの近くで美味しいものは何?」,「涌き水はどこ?」といった情報をその場で知ることが出来ます。森の中で楽しむITは,グリーンツーリズムやエコツーリズムの魅力向上に繋がるでしょう。
ネットワークカメラ
ネットワークカメラ(30万画素)及びのセンサを標準で実装しています。
ネットワークカメラは以下のものに変更または追加出来ます。
・300万画素のデジタルカメラ
・パン・チルト・ズーム可能なカメラ
一台のフィールドサーバで様々なポイントを異なる倍率で撮影
トレーサビリティシステムのための生産履歴情報の自動収集,「隠さない農業」,農園の監視,農産物のクローズアップ画像を用いた農産物生体認証システムなどに利用できます。
・顕微カメラ

イネの葉の表面 |

害虫のクローズアップ
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・赤外線熱画像カメラ
超高輝度LED照明
フィールドサーバには照明・UI用超高輝度LEDを内蔵しています。点滅によって人に合図を送ったり,カメラ撮影用照明,庭園灯,防犯灯等に利用できます。必要に応じて超高輝度LEDの数や色を変えることができます。
太陽電池
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